.TMOについて
1.タウンマネージメントについて

Q50 タウンマネージメントとは何ですか。
A50  タウンマネージメントとは中心市街地における商業集積を一体として捉え、業種構成、店舗配置等のテナント配置、基盤整備及びソフト事業を総合的に推進し、中心市街地における商業集積の一体的かつ計画的な整備をマネージ(運営・管理)することです。
 すなわち、様々な主体が参加するまちの創造と運営を横断的・総合的に調整し、プロデュースすることです。
その具体的内容として、
①キーテナントや各商店街の特徴付け等、域内のテナントの配置・誘致
②駐車場、ポケットパーク等の環境整備
③域内美化、イベント、共通カード等の関連事業
等があげられますが、さらに中心市街地の衰退を招いた原因の一つである土地利用問題にまで範囲を広げることもできます。
 このような考え方は、欧米での経験を参考として考案されたものです。ちなみにアメリカでは都市部・ダウンタウンの衰退、空洞化に対して、かつては、主として建物等の物的改良を行おうという対策が取られましたが、まちの外観は一新されたものの、タウンタウンの競争力を高め、消費者が郊外から回帰するという目的はほとんど達せられませんでした。
 そこで、ダウンタウンの商店街と、郊外ショッピングセンターとの競争力の違いはマネージメント力やマーケッティング力にあるのではないかという認識が生まれ、ショッピングセンター型の統一的マネージメントの手法があみ出されてきました。この手法が後にセントラライズド・リテール・マネージメント(CRM)として知られるようになったものです。
  CRMを一言で言うと、土地あるいは建物の所有者の協力を通じて、店舗ミックスのコントロールなど、近代的なショッピングセンターの成功要因をダウンタウンの商店街においても実現しようということです。
  CRMの具体的活動は
①安全性の維持・向上
②公共施設(歩道等)の改善・維持・管理
③スペシャルイベント
④ダウンタウンに対するイメージの改善
⑤マーケット分析とマーチャンダイジング・プラン
⑥共同広告
⑦テナント・リクルートメント(テナント誘致)
⑧小売店の発展支援、事業サポート・サービス
⑨共同契約書の作成と遵守
⑩出店計画についての審査・拒否権
と多岐に渡っています。
  元来CRMでは、上記①~⑩(特に⑨⑩)を通じ、リース契約・店舗ミックスなど統一的にコントロールしようとすることがその最終目標であったといわれていますが、この⑨⑩については店舗の所有者や小売店等の事業者の自由度を著しく制約することになり、これに反発する関係者も多く、実際に行われている地域で最終目標を達成した地域はあまり多くないといわれています。

2.TMOの概要について

Q51 TMOとは何ですか。どのような考えに基づくものですか。
A51  TMO(Town Management Organization)は、その名のとおりまちづくりをマネージ(運営・管理)する機関です。すなわち、様々な主体が参加するまちの運営を横断的・総合的に調整し、プロデュースします。時には、施設の整備・運営主体となることもあります。
法においては、TMO構想を作成し、その構想が適当である旨の市町村の認定を受けた者(商工会、商工会議所、3セク特定会社、3セク財団法人)を「認定構想推進事業者」とし、単独又は組合等と共同で計画の作成及び実施にあたることとしています。この「認定構想推進事業者」がいわゆるタウンマネージメント機関(TMO)です。


Q52 法に規定されている中心市街地整備推進機構とTMOとはどのような関係になっていますか。
A52  中心市街地整備推進機構は、中心市街地の市街地整備に当たり、関係者の利害関係等を積極的にコーディネートし、また、自らも散発的に生ずる空き地等を事業用地として先行取得したり、駐車場等の公益施設の整備事業等を機動的・弾力的に行うこととしており、公益法人をその主体として想定しているものです。

 これに対して、TMOは、中心市街地全体の商業の活性化に向け、構想・計画を作成し、テナント・ミックスの管理、商業基盤施設等の整備、共同ソフト事業の実施を行っていく機関であり、商工会、商工会議所、3セク特定会社・3セク財団法人をその主体として想定しているものです。
 市町村が中心となって、これらの両機関が有機的に連携することにより、市街地の整備改善事業と商業活性化事業を総合的に実施することが可能となります。
 なお、公益法人の場合には、それぞれの要件を充たせば同一の組織が中心市街地整備推進機構とTMOを兼ねることも可能です。


3.TMOの発足について

Q53 TMOは必ず設けねばならないのですか。
A53  中小小売商業高度化事業を実施するためにはTMOを必ず設ける必要があ  りますが、中小小売商業高度化事業を実施しない場合、TMOを設ける必要  はありません。中小小売商業高度化事業は、中心市街地の商業等の活性化に  向けた事業の一部であるので、他の事業により商業の活性化を図ることとし、  中小小売商業高度化事業は実施しないということもありえないわけではあり  ません。
 しかし、中心市街地全体を面的に捉えて商業等の活性化を図っていくという観点から、TMOにより中小小売商業高度化事業を実施、推進していくことが望ましいと考えられるため、TMOを活用した事業に対しては支援策も手厚くなっています。


54 TMOという団体は新たに設立されるものですか
A54  前問の通りTMOの機能(タウンマネージメント機関としての機能)を担う主体としては商工会、商工会議所、3セク特定会社、3セク財団法人がありますが、TMOの機能を担う主体を新たに設立する必要はなく、法律等で定める要件を満たしていれば既存の3セク特定会社、3セク財団法人もTMOになることができます。
  ただし、既存の特定会社、財団法人についてはそれぞれ定款等の定めによりその活動範囲が規定されていますので、実際にTMOとなる場合にはその点においての調整が必要となることがあります。



Q55 TMOにはどのような団体がなれるのですか。
A55  TMOは、基本計画に中小小売商業高度化事業に係る事項が記載されている場合であって、TMOとなろうとする主体がTMO構想を作成し、市町村よりTMO構想の認定を受けて、TMOとなろうとする主体がTMOとなることが出来ます。
 TMOになれる者としては、
①商工会
②商工会議所
③3セク特定会社(中小企業者が出資している会社であって、大企業者の出資割合が1/2未満であり、かつ、地方公共団体が発行済株式の総数又は出資金額の3%以上を所有又は出資している会社)
④3セク財団法人(基本財産の額の3%以上を地方公共団体が拠出している財団法人)
の4者が挙げられています。
 これらの者は、各地の市町村において、中心市街地全体の商業の活性化に取り組むにふさわしいと考えられ、その事例もみられることから、今回TMOになれる者としたものです。
 また、TMOが事業を行おうとする場合や、支援を受けようとする場合においては、更に要件が加わる場合もありますのでご注意ください(A47、A72参照)。


Q56 商店街の組合はTMOになれないのですか。
A56  今のところ、商店街振興組合等が中心市街地全体の商業の活性化に主体的に取り組もうとしても中心市街地全体をカバーしきれないこと、また、市の商店街振興組合連合会等であっても市内の任意の商店会等は会員となれないことなどから、当面、商店街振興組合等がTMOになることは想定していません。しかし、TMO計画を策定するには、実体上、商店街振興組合等の商業者のコンセンサスが不可欠であり、その意味でも商店街振興組合等がTMO設立に当たって主導的役割を果たすことが期待されます。
 なお、今後新たに「中心市街地における中小小売商業高度化事業の総合的な推進を図るのにふさわしい者」がでてきた場合に、政令による主体の追加が可能となっています。



Q57 土地開発公社はTMOになれるのですか。
A57  土地開発公社は、「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づき、設立さ れる法人であります。
 他方、TMOとなることができるのは商工会、商工会議所、3セク特定会社及び3セク財団法人であり、土地開発公社はこのいずれにも該当していないためTMOとなることは出来ません。


Q58 商工会、商工会議所がTMOになる場合、商店街は関係なくなってしまうのですか。
A58  商工会、商工会議所がTMOとなる場合、商工会等は中心市街地の商店街
等の意見の汲み上げや取りまとめを通じて、地元の商業者のコンセンサスを形成し、構想・計画の作成、事業の推進を図っていくこととなります。
 したがって、地元の商店街と商工会等とは、中心市街地の商業の活性化 に向けた構想・計画の作成、事業の実施に当たって、緊密に連携していくこととなります。



Q59 TMOに3セク特定会社、3セク財団法人がなる場合、商工会、商工会議所との関係はどのようになるのですか。
A59  3セク特定会社や3セク財団法人がTMOになる場合であっても、地元の商業者のコンセンサスの形成等を図っていくこととなるため、地元の商工会、商工会議所とも緊密に連携していくこととなります。


Q60 TMOはどのようにして設けるのですか。誰が主導するのですか。商店街振興組合等が主導することができるのですか。
A60  商工会、商工会議所、3セク特定会社、3セク財団法人が、TMOとして中心市街地の商業の活性化を図っていこうとする場合、市町村の作成する基本計画に記載された中小小売商業高度化事業について、TMO構想を作成し、市町村の認定を受けなければなりません。
 このため、TMOとなろうとする者は、まず、地元商業者等関係者から構成される勉強会、協議会等を開催し、商業者や住民の意見を汲み上げ、地元のコンセンサスを形成し、これをTMO構想として取りまとめることが必要となります。
 例えば、商店街振興組合等が主導してTMOを設立しようとする場合には、まず、中心市街地の商店街をどのように活性化させていくかについて組合員のコンセンサスを形成するため、組合員が集まってじっくりと議論を行う機会を数多く設けることが必要です。そこで、コンセンサスが形成されれば、商工会、商工会議所又は3セク特定会社、3セク財団法人と協力してTMO構想として取りまとめていくこととなります。


Q61 TMOは市町村に1つに限定されるのですか。
A61  TMOは、TMO構想の認定を受けたものであります。1つの中心市街地において複数のTMO構想が設定されることはありえず、原則として中心市街地は各市町村に1つですから、TMOも原則として各1つとなります。
 なお、中心市街地が複数ある場合には基本計画も複数あると考えられ、TMO構想も複数となることがあり得ます。従って、このような場合にはTMOも複数存在することが考えられます。
 ただし、このような場合にあってもTMOの主体が同一の場合も考えられます。


Q62 TMOは新たに事務所を設ける必要性がありますか。
A62  TMOの主体となる団体が既にある場合において、現在の事務所をそのまま活用できるのであれば、新たに事務所を設ける必要はありません。
 例えば、商店街振興組合(連合会)等、商工会、商工会議所、3セク特定会社、3セク財団法人の事務所の活用等が考えられます。


Q63 TMOに商工会議所、商工会がなる場合、専従の職員をおく必要がありますか。
A63  必ずしも、専従の職員を置かなければならないものではありませんが、TMOの活動は、多岐にわたるものであり、かつ、手間がかかるものも多いことから、TMO関連の活動を担当する専従の職員を置くことが望ましいと思われます。


Q64 商工会、商工会議所の経営指導員がTMOとしての業務に従事できますか、職務専念義務等との関係はどうなりますか。
A64  商工会、商工会議所の経営指導員は経営改善普及事業(小規模事業者の経営の改善発達を支援する事業)に従事することとなっていますが、小規模事業者の経営の改善発達を支援する事業等であって、各都道府県知事の承認を受けた事業であれば、経営改善普及事業に直接該当しなくとも、従事することは差し支えないこととしており、TMOとしての事業はこれに該当しうるものと考えられます。
 よって、商工会、商工会議所の経営指導員がTMOとしての事業に携わることは各都道府県の知事の承認を受ければ可能と考えられます。


Q65 商工会法第6条及び商工会議所法第4条により、商工会・商工会議所は営利事業を営むことが禁止されていますが、商工会・商工会議所がTMOとなった場合に、再開発ビルの取得及び賃貸等の事業を行うことが可能ですか。
A65  商工会法第6条第1項は、「商工会は、営利を目的としてはならない。」 と規定しているが、この趣旨は、「利益を獲得する意志をもって事業を行っ てはならない。」という意味であり、「結果的に事業について多少の剰余金が生じても、法第6条第1項に抵触するものでは」ないと解されています。
 また、商工会議所法第4条第1項は、「商工会議所は営利を目的としてはならない」と規定しており、これについては、「商工会議所の本来の事業又はその付帯事業によって事業を円滑に遂行するための必要最小限度の利益を得ることを妨げるものではなく、」また「営利を目的としていない事業であって、結果的に利益が伴うことがあり得る事業までも禁止しているものではない。」と解されています。
 したがって、再開発ビルの取得や賃貸等の事業についても、こうした趣旨に反しない限り、TMOとしての事業として、行うことができるものと考えられます。


66 TMOの規模(人数)や資本金(基本財産)などの面における最低基準はありますか。
A66  中心市街地活性化法において、TMOの規模(人数)や資本金(基本財産)についての最低基準は特に設けられていませんが、既述のように、3セク特定会社、3セク財団法人については主体要件が設けられています。


Q67 TMOはどのような人で構成すればよいのですか
A67  TMOは、関係者の意見の汲み取りや取りまとめを通じて、コンセンサスを形成し、構想・計画を作成することが必要となることから、地元の商業等の事情に精通した者(商工会・商工会議所の代表、地元商店街・大型店の関係者、地権者・地域住民等)が含まれることが望まれます。
 また、中心市街地の商業の活性化は、都市計画や道路、駐車場等各種基盤整備などとも密接不可分であることから、商業の専門家のみならず都市計画等に関する専門的な知見を有する者も含まれることが望まれます(基本方針二 2の1の1(3)③参照)。
 これらの専門家は、特段常勤である必要はありません。会議や協議時の構成メンバーであったり、他団体と併任でもかまいません。
 なお、こうした専門的な知見を有する者が地元で見つからないような場合には、中小企業総合事業団によるタウンマネージャーの派遣も受けられます。


Q68 TMO構想に基づく事業に対しては、その他の事業と比べて支援の内容に違いがあるのですか。
A68  TMOが作成した構想に基づいて実施する事業に対しては、中小小売商業振興法等に基づくその他の事業に対するものと比べ、補助金、高度化無利子融資、税制措置等において支援の内容が拡充されており、さらに、中心市街地商業活性化基金による支援も受けられます。
 各々の支援の内容については「Ⅲ.支援策について」を参照して下さい。