Ⅳ商店街振興組合によって成果を上げている事例 ■下町風情を生かして近代化、強いPR力で顧客を捉える 谷中銀座商店街振興組合 台東区の西北端に位置する谷中銀座商店街振興組合(組合員63名、街長170m)は、最寄型の商店街として戦後まもなくから発展してきたが、その後の環境変化により顧客が激減し、一時期空き店舗率20%という、まさに商店街の存亡をかけた危機に直面していた。そのため、商店街は法人化を図り、東京都モデル商店街事業第1号の指定を受け、昭和59年、カラー舗装、アーチ、各店の史跡看板などを設置して、その特色あるハード整備によって一躍話題となったのである。同時に、昭和52年からスタートし、約8割が加盟するスタンプ事業、ほぼ日常的に行われているイベントと内部制作によるチラシ、積極的なマスコミヘの働きかけというPR力によって、これまで多くの危機を乗り越えてきた。今後は、周辺地域に開発が進む高層マンションの新住民をいかに取り込むかという課題を前に、新たな計画に取り組んでいる。 ![]() ■横浜のアメ横 洪福寺松原商店街振興組合 横浜市の天王町駅前に立地する洪福寺松原商店街振興組合(組合員93名、街長437m)は、活発なイベントと時季を捉えた安売りで他商店街と差別化を図り、平日1万2千人、休日2万人の来街者のある横浜のアメ横とも言われる商店街である。 当商店街は、昭和27年、会員数18名で発足した当初より「いいものを安く」をモットーとして、生鮮3品を中心に、下町的な商店街として発展してきたが、大型店の脅威を感じて昭和38年、松原シールサービス会を発足した。また、昭和47年には洪福寺松原商店街危機突破総決起大会を開き、この頃より本格的な組織活動に入った。 昭和48年には横浜市から街づくり機能改善事業商店街の指定、49年には横浜市街づくり市街地型モデル商店街の指定を受け、活性化事業を行った。カラー舗装、街路灯、アーチの新設等ハード面の近代化を行い、昭和58年には駐車場の賃借経営に着手した。また、新春、節分、ゴールデンウイーク等々時季に合わせたイベントを活発に行い、シールサービス会では抽せん会、四季ごとの旅行招待などを行っており、いつも何かをやっている、活力のある楽しい商店街として評価されている。 当商店街の坪当たり売上は横浜市でも上位に入っている。今後は若い客層を吸引できるモダンな商店街をめぎして、さらに街づくり計画を研究している。 ■広域型から地域・近隣型へと大方向転換した ハッピーロード大山商店街振興組合 東武東上線大山駅前にあるハッピーロード大山商店街振興組合は、買回り品を中心とした広域型商店街として発展してきた。組合員199店という大所帯で、板橋区の中心商店街としての役割を果たしてきた。 しかし、昭和の末期に入り、地下鉄有楽町線の成増駅開通や巨大商業ゾーン池袋、新宿へのアクセス性の良さ等から、駐車場を持たない住宅密集地帯の当商店街は、これまでの広域吸引力を急速に失い、徐々にかげりを帯びてきた。そこで、これまでのイベントによる一時的な顧客吸引から、顧客の固定化に効果を発揮するカード事業の導入を平成3年より検討し、平成6年度に実施に踏み切った。中小企業事業団が開発したSTARシステムにより、加盟店90店、端末100台で加盟店は月々1,800円の保守料を負担しての出発である。 このカードシステム導入により、日用雑貨、化粧品、食料品を中心に売上が増加し、その成果は徐々に出始めている。また、このような活動の副次的効果として、組合員の団結力が一層高まったこと、若い組合員のやる気が高まったこと、顧客とのコミュニケーションが活発になったことなど、多くの変化を見せている。平成6年にはイトーヨーカ堂の街内からの撤退もあり、さまざまな環境変化の中で地に足を付けて業況を捉え、商店街の方向性を大転換させた当商店街は、アーケードの建て替えも終えて、カード機能の充実による効果アップに更に取り組んでいる。 ![]() ■基盤施設の近代化と「一店逸品運動」で活気づく 静岡呉服町名店街 商店街振興組合静岡呉服町名店街(組合員73名、街長400m)は、静岡県の県庁所在地にあり、県商業の中核的役割を果たしてきた老舗商店街である。しかし、近年の社会情勢の急激な変化に対する商店街の対応の遅れから、徐々にその活力が低下していった。 そこで、平成2年より、コミュニティマート構想策定事業に取り組み、当商店街の歴史的役割である地域の商業文化や豊かなコミュニケーションの拠点となりうるような21世紀の街づくりを目指して活動を開始した。 商店街のイメージアップとして、老朽化したアーケードの撤去、新設、歩車道の路面改修、モニュメントやオリジナルデザインの街路灯を設置し、平成8年にモールアーケードを完成した。さらに、このアーケード整備に合わせ各個店のリニューアルも実施され、一層商店街のイメージアップヘとつながった。特にハード事業で力を入れている点は、歴史ある商店街として、江戸時代の庶民の生活を取り入れたオブジェ等の設置によりわが街らしさを演出している点で、開放的で明るい商店街に独特の情緒を付加するものとなっている。 一方、ソフト面でもっとも効果を上げている事業は「一店逸品運動」で、加盟各店が、静岡らしい、呉服町らしいオリジナル商品を開発して逸品フェアを開催している。開発された商品は、消費者の日ごろ見えにくいきめ細かなニーズに応えたものが多く、お客様の顔が見える個店ならではのアイディアが数多く取り入れられている。逸品開発は現在も継続的に行われており、高い評価を得ると同時に来街者との心の交流をはかる重要なソフト事業となっている。 ![]() ■全天候型高層アーケードで超広域吸引力を発揮する 仙台・一番町一番街商店街振興組合 東北全体を商圏内におさめた仙台市の中心商店街では、ハード面での近代化が進み、“おしやれな街・仙台”のイメージを定着させている。 中でも一番町一番街商店街振興組合(組合員77名、街長200m)は、全天候型の高層アーケードを完成させ、専門店街としての快適で魅力ある商空間づくりに成功している。いずれも高層であることと優れたデザイン性から、国際感覚を取り入れたスケールの大きな豊かな空間作りとなっている。また、同時に行った路面の舗装、ゲートモニュメントなどによるイメージアップが、個店の改装をも促進し、広く吸引力を発揮している。 ![]() ■市の都市計画街路事業に併せて近代化 岩井市中心部商店街 茨城県岩井市は首都圏近郊整備地帯として計画的な市街地整備が行われている。その中で、中心商店街が、市の実施する街路事業に併せて近代化を図った事例である。 多様化、高度化した消費者ニーズに応えられる魅力ある商店街の創出を目的に、地元商店街、市、商工会が一体となって街づくり計画が始まったのは、昭和60年のことである。その後、市の街路計画の準備が進む中で、商店街は平成2年と3年に本町地区、仲町・新町地区がそれぞれ岩井市本町商店街振興組合(組合員35名、街長180m)、岩井センターモール商店街振興組合(同52名、320m)の法人格となり、本格的な商店街整備事業が開始された。 事業の内容は、市の計画として道路の拡幅、歩道の設置、カラー舗装、街路樹・街路灯の設置が平成3年~7年にかけて実施されるのに合わせ、高度化事業を導入し、街路灯、放送設備、電話ボックス、案内板、時計塔、イルミネーションのコンセントボックス、ポケットパーク、その他街具の設置を行い、平成7年9月に岩井センターモールを完成した。同時に東京電力、NTTの協力を得て、電線、電話線の地下埋設工事も行った。 この近代化事業の完成後、従来からのイベントである「大神輿の夏祭り」や平将門に由来した「将門祭」が青年部等を中心に活性化され、市の人口に近い4万人もの観光客を吸引した。また、商店の営業を午後8時まで延長し、週末にはハナミズキの街路樹にイルミネーションを点灯し、他県からのドライブ客を誘い、イメージは一新され、知恵を絞ったイベントや催し物も活発に行われるようになった。最近では夜間の時間帯を利用した「シンデレラセール」が大好評で、2万人の人出があり、「一店一品超目玉セール」も継続され、多く客を呼んでいる。 ![]() |